教育現場における生成AIコンテンツと著作権法 #近未来教育フォーラム #イベントレポート
上原伸一氏の近未来教育フォーラムにおける講演「教育現場における生成AIコンテンツと著作権法」よりお送りします。
デジタルハリウッド株式会社は、2024年11月30日(土)、近未来教育フォーラム2024 を開催しました。今年のテーマは 『The Great Transition〜ポストAIは来ない〜』。AI時代を生き抜くための教育のあり方について、豪華なゲストスピーカーと共に探究しており、AICU編集部でも複数回の特集で紹介していきたいと思います。
ブレイクアウトセッション:多様なテーマで教育の未来を考える
キーノートに先立ち、4つのテーマでブレイクアウトセッションが開催されました。
Session1: 教育現場における生成AIコンテンツと著作権法 (上原伸一氏)
Session2: クリエイティブ教育に生成AIは必要か? (小泉薫央氏)
Session3: DXハイスクール2年目、なにを企画しますか? (鹿野利春氏、小笠原健二氏)
Session4: AI時代における人材確保と働き方改革 (村田弘美氏)
『教育現場における生成AIコンテンツと著作権法』
【上原伸一】デジタルハリウッド大学特命教授、国士舘大学知財大学院客員教授、大阪工業大学大学院客員教授。東京大学文学部社会学科卒業後、朝日放送に勤務、著作権部長等。1999年から2010年まで文化庁の著作権の審議会で専門委員。2018年から社団法人日本音楽著作権協会理事。
著書:「海の楽園パラオ~非核憲法の国は今」(あみのさん)「クリエイトする人たちのための基本からの著作権」(商事法務)など。
(https://dhw2024educationforum.peatix.com/ より引用)
上原氏はまず、著作権の基本について触れ、「著作権は『思想または感情』の創作的表現を保護するもの」と説明しました。そして、AIが生成するものはこの定義に当てはまらないため、著作物ではないと述べました。
続いて、著作権に関する国際的な違いについても言及しました。各国で法律が異なるため、同じ事案でも裁判の判決が変わる可能性があることを指摘し、「春风送来了温柔(春風が優しさを送る)」事件を例に挙げました。
【AICU編集部補足】AICU編集部しらいはかせも中国の最近の学生さんについてまとめていましたので引用します。
生成AIを道具として使った創作コンテンツについては、「著作物になりうる」と説明しました。例として、人間が原作とセリフを、AIが絵を担当した漫画「Zarya Of The Dawn(夜明けのザーリャ)」のケースを紹介。このケースでは、絵の部分は著作物と認められなかった一方で、原作とセリフは著作物として認められたとのことです。
【AICU編集部補足】ZARYA OF THE DAWN
https://en.wikipedia.org/wiki/Zarya_of_the_Dawn
さらに、生成AIに極めて具体的な指示を出して生成されたコンテンツについては、「著作物になりうる可能性がある」と述べました。『CGWORLD』11月号に掲載された、大学学長からの具体的な指示に基づき、担当者が試行錯誤してAIで生成した作品が著作物と認められた事例を紹介し、そのポイントは受発注の関係にあることだと解説しました。Wordで作文をするのと同様の行為だと例えて説明しました。
【AICU編集部補足】「CGWORLD vol.315」画像生成AIによる表紙メイキング、大公開。Webによる記事に加え、書籍文献版が「AICU Magazine Vol.6」にて入手可能です。
生成AIコンテンツが著作物と認められた場合、著作権法による保護を受けます。逆に、著作権が蔑ろにされた場合、契約違反には該当するものの、権利の侵害には当たらないケースもあることを、具体的な事例を挙げて説明しました。
生成AIを使用してコンテンツを作成する際の注意点として、AIの学習自体には既存著作物の利用が認められているものの、生成されたコンテンツが既存著作物を想起させるほど似ている場合、著作権侵害になる恐れがあると指摘しました。また、既存の著作物に依拠した類似コンテンツを作成した場合も、著作権侵害になる可能性があると注意喚起しました。
さらに、裁判官の判断には個人差があるため、同じ事案でも判決が異なる可能性があると述べ、中国では既に2万件ものAI関連の著作権訴訟があり、豊富な判例が蓄積されていることを紹介しました。日本ではまだ訴訟は出ていないものの、今後の動向に注目する必要があるとしました。
最後に、教育現場における著作権の特別規定について触れ、授業に必要な範囲内であれば複製が可能だが、著作権の利益を不当に害してはならず、授業外に持ち出す場合は許諾を得る必要があると説明しました。
まとめ
AI技術の急速な発展に伴い、著作権に関する理解はますます重要になっています。特に生成AIの登場は、従来の著作権の概念を揺るがす可能性を秘めています。今回の講座は、生成AIと著作権に関する最新の情報を学ぶ貴重な機会となりました。今後、AI技術がさらに進化していく中で、著作権に関する知識をアップデートし続ける必要性を強く感じました。生成AIを利用する際には、今回学んだ内容を踏まえ、著作権侵害のリスクを理解した上で、適切な対応を心がけたいと思います。
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AI時代に求められる教育とは何か?
AIの急速な発展は、私たちの社会、経済、生活を劇的に変化させています。そして、この変化は「The Great Transition」と呼ばれる大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。デジタルハリウッド創立者の杉山知之氏は、「ポストAI時代は到来しない」と述べ、AI技術の進化が継続する未来において、私たちがどのように文化を築き、社会を形成していくべきかを問いかけています。
キーノート:3名の専門家が「The Great Transition」を語る
本フォーラムのキーノートには、以下の3名の専門家が登壇します。
安野貴博氏 (AIエンジニア、起業家、SF作家): AIが人間社会のコミュニケーションをどのように変えていくのか、そしてAIが様々な物事のやり方を変えるポテンシャルについて、東京都知事選での実践例を交えて語りました。
岡瑞起氏 (筑波大学准教授、人工生命研究者): 人工生命研究の知見とOpen-endednessの概念から、未来の創造プロセスと社会のあり方を探ります。創造性の概念がどのように変化していくのか、その未来像を提示しました。
藤井直敬卓越教授 (デジタルハリウッド大学大学院): 脳科学者の視点から、「The Great Transition」における教育の役割について、他の2名のスピーカーと共に議論を深めました。
続く特集もお楽しみに!
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